音楽と日々

あの年、あなたは何を聴いていましたか?

毎年のビルボード年間チャートTOP10を時代の空気とともに振り返ります。日本と米国、それぞれのチャートを彩ったヒット曲たちを、当時の社会背景やカルチャーと重ねながら紹介。全曲Spotify試聴リンク付きで、懐かしいあの曲にすぐ出会えます。

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2008年 ビルボード TOP10 洋楽ヒット曲を振り返る

2008年 ビルボード TOP10 洋楽ヒット曲を振り返る

2008年は、世界情勢において歴史的な転換点となった年です。9月に起きたリーマン・ショックによる世界金融危機は、深刻な不況をもたらし、人々の生活や意識を大きく変えました。一方で、アメリカではバラク・オバマが大統領選挙で歴史的な勝利を収め、「Change」という言葉が希望の象徴として世界中に響き渡りました。また、北京オリンピックが開催され、ウサイン・ボルトの世界記録更新など熱狂的なスポーツの祭典が世界を沸かせました。日本国内では「メタボリックシンドローム」が流行語となり、健康意識への高まりが見られた一方、世界的なスマートフォン普及の黎明期にあたり、人々のライフスタイルがデジタル化へと急激にシフトし始めた時期でもありました。 音楽シーンにおいては、デジタルトランスフォーメーションが本格化し、着うたやデジタル配信がチャートアクションを決定づける重要な要素となっていました。ジャンルとしては、ヒップホップの要素を取り入れたアップテンポなダンス・ポップや、オートチューンを効果的に活用した楽曲がトレンドを形成しました。特に、この年にデビューしたレディー・ガガは、音楽性だけでなくファッションやビジュアルを含めたトータル・エンターテインメントで衝撃を与え、新たな時代のポップアイコンとして君臨しました。また、リアーナやフロ・ライダー、クリス・ブラウンといったアーティストたちが、クラブサウンドをメインストリームへと昇華させ、世界中のチャートを席巻した1年でした。 1位: Low / Flo Rida feat. T-Pain リリース年: 2007年 収録アルバム: 『Mail on Sunday』 2008年の年間チャートを制したのは、フロ・ライダーのデビュー・シングルでした。前年後半にリリースされ、2008年を通して驚異的なロングヒットを記録しました。T-Painのオートチューンを多用したフックと、中毒性の高いビートが完璧に融合したこの楽曲は、当時のクラブ・アンセムとして全米のダンスフロアを独占しました。この曲の凄まじいヒットの背景には、映画『ステップ・アップ2: ザ・ストリーツ』での起用が大きな起爆剤となっており、ダンス映画ブームと相まって若者を中心に爆発的な人気を獲得しました。また、当時のデジタル配信マーケットの急速な拡大も追い風となり、驚異的なダウンロード数を記録。ヒップホップが持つ「パーティーミュージック」としての側面を最大限に引き出し、ポップチャートの頂点に君臨し続けた名曲です。 Spotifyで再生 YouTubeで「Flo Rida Low」を視聴する
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2008年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2008年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2008年は、日本社会にとって大きな転換点となる出来事が重なった1年でした。世界的な金融危機であるリーマン・ショックが直撃し、日本経済も急激な円高や株価暴落に見舞われ、閉塞感が漂いました。一方で、北京オリンピックが開催され、北島康介の2大会連続2冠など、スポーツによる熱狂が国民を勇気づけました。また、秋葉原通り魔事件のような衝撃的な事件もあり、人々の不安を反映するかのように「生きること」「絆」を問うムードが社会全体に漂っていました。流行語大賞には「アラフォー」が選ばれ、中高年層のパワーが再認識されたことも、この年の世相を象徴する出来事といえます。 音楽シーンにおいても、前向きなメッセージや、誰もが口ずさめるキャッチーな楽曲が強く支持されたのが特徴です。着うたフル®を中心としたデジタル配信の普及がピークを迎え、携帯電話からヒットが生まれる傾向が完全に定着しました。GReeeeNのような顔出しをしないグループが社会現象を巻き起こす一方で、嵐のようなアイドルグループがミリオンヒットを連発し、CD市場のシェアを大きく塗り替えました。また、テレビバラエティ番組発のユニット「羞恥心」がランキング上位に食い込むなど、音楽ジャンルを超えたエンターテインメントとしてのヒットが目立った1年でした。 1位: キセキ / GReeeeN リリース年: 2008年 収録アルバム: 『あっ、ども。おひさしぶりです。』 「明日、今日よりも好きになれる」というあまりにも真っ直ぐなフレーズが、日本中を席巻しました。歯科医師としての活動を両立しながら顔を明かさないという異色のスタイルでデビューした彼らにとって、本作は最大の代表曲となりました。ドラマ『ROOKIES』の主題歌として起用されると、そのドラマの爆発的なヒットとともに、主題歌であるこの楽曲も驚異的なロングヒットを記録。卒業ソングの定番としても定着し、カラオケランキングでは長期間にわたり1位を独占しました。デジタルダウンロード数においても、当時のギネス記録を更新するなど、まさに2008年を象徴する「時代のアンセム」となりました。若者から大人まで、大切な人を想う普遍的な心情を、力強いメロディとハーモニーで表現したことで、単なる流行歌を超えて、世代を超えた愛唱歌として聴かれ続けています。 Spotifyで再生 YouTubeで「GReeeeN キセキ」を視聴する
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2009年 ビルボード TOP10 洋楽ヒット曲を振り返る

2009年 ビルボード TOP10 洋楽ヒット曲を振り返る

2009年は世界にとって激動の1年でした。前年秋に起きたリーマンショックの余波が世界経済を冷え込ませ、自動車産業の危機など深刻な不況が社会を覆いました。そんな中、アメリカではバラク・オバマが大統領に就任し、「Yes We Can」のスローガンとともに変革への期待が大きく高まった年でもあります。また、マイケル・ジャクソンの突然の訃報は全世界を深い悲しみに包み込み、多くのファンが彼を追悼するために音楽を手に取りました。iPhone 3GSの発売などスマートフォンの普及が加速し始め、人々の情報収集やメディア消費のあり方が劇的に変化した時代でもありました。 音楽シーンにおいては、デジタルの波が完全に主流となりました。フィジカルCDからデジタルダウンロードへの移行が急速に進み、配信チャートがビルボードの順位に直結する時代となりました。特にエレクトロ・ポップの台頭が顕著で、レディー・ガガのデビューは音楽業界に衝撃を与えました。彼女の独創的なファッションと中毒性の高いサウンドは、2000年代前半のR&B主導のヒットチャートを塗り替え、ダンスミュージックを再びメインストリームへと押し上げました。一方で、テイラー・スウィフトのような若きシンガー・ソングライターがカントリーからポップ界を席巻し、ジャンルの垣根が曖昧になりつつある過渡期でもありました。 1位: Boom Boom Pow / Black Eyed Peas リリース年: 2009年 収録アルバム: 『The E.N.D.』 2009年のビルボード年間チャートを制したのは、ブラック・アイド・ピーズによるこの強烈なエレクトロ・アンセムでした。彼らはこの曲で、ヒップホップ・グループとしての枠組みを超え、オートチューンを駆使した先鋭的なダンス・ミュージックへと大きく舵を切りました。ウィル・アイ・アムの先見の明が光るプロダクションと、Fergieの圧倒的なボーカルが融合し、クラブシーンから全米のスタジアムまでを熱狂させました。この曲は単なる一過性のヒットにとどまらず、エレクトロ・ポップが当時のチャートを支配する先駆けとなった重要な楽曲です。ビルボードのHot 100で12週連続1位という驚異的な記録を樹立し、デジタル時代における「中毒性」がヒットの必須条件であることを証明しました。 Spotifyで再生 YouTubeで「Black Eyed Peas Boom Boom Pow」を視聴する
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2010年 ビルボード TOP10 洋楽ヒット曲を振り返る

2010年 ビルボード TOP10 洋楽ヒット曲を振り返る

2010年の世界は、未曾有の経済危機「リーマン・ショック」の余波から徐々に回復の兆しを見せつつも、依然として先行き不透明な空気が漂う中での幕開けでした。アメリカではオバマ政権の医療保険改革法が成立し、大きな論争を巻き起こしました。一方、エンターテインメント界では、iPhoneやiPadの普及が加速し、モバイルデバイスが人々の生活と情報消費スタイルを劇的に変え始めた年でもあります。また、南アフリカでのFIFAワールドカップが開催され、世界中がサッカーの熱狂に包まれました。SNSの浸透も顕著で、情報の拡散スピードが爆発的に向上し、流行のサイクルがかつてないほど高速化していく過渡期でもありました。 音楽シーンにおいては、前年から続くエレクトロ・ポップの隆盛が頂点に達した一年でした。レディー・ガガが確固たる地位を築き、クラブサウンドをベースにしたダンス・ミュージックがメインストリームを完全に支配しました。また、オートチューンを活用したヴォーカル・エフェクトも定番化し、より洗練されたプロダクションが求められるようになります。一方で、エミネムやB.o.Bといったヒップホップ勢が、ポップスと融合したクロスオーバーなヒット曲を連発し、チャートの上位を席巻しました。デジタル配信によるシングル単位でのヒットが完全に定着し、アルバムのトータルな物語性よりも、一曲ごとのインパクトとキャッチーなフックがチャートの順位を左右する、まさに「デジタル・シングル時代」の象徴的な年となりました。 1位: TiK ToK / Ke$ha リリース年: 2009年 収録アルバム: 『Animal』 2010年の年間チャートを制したのは、デビューしたばかりの新人ケシャによる強烈なダンス・アンセムでした。この楽曲は2009年にリリースされたものですが、年をまたいで爆発的なロングヒットを記録し、その年の顔となりました。打ち込みの重厚なビートに、半分語りかけるような中毒性の高いメロディは、当時の若者たちのパーティ・ライフをそのまま切り取ったようなリアリティがありました。彼女の「パーティーガール」というキャラクターは賛否両論を呼びましたが、逆にそのキャラクター性がSNS時代において圧倒的な拡散力を持ち、ラジオやクラブで飽きることなく再生され続けました。オートチューンを巧みに使いこなした無機質なヴォーカル・スタイルは、当時のダンス・ミュージックのトレンドを象徴しており、今聴いてもなお色褪せないパーティー・チューンの金字塔です。この曲の成功は、無名の新人が瞬く間に世界的スターへと駆け上がるデジタル時代の申し子的なシンデレラストーリーを体現し、後のポップシーンにも多大な影響を与えました。 Spotifyで再生 YouTubeで「Ke$ha TiK ToK」を視聴する
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2021年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2021年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2021年は、世界中が新型コロナウイルス感染症の影響下にあり、日本でも度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されるなど、閉塞感が漂う一年となりました。東京オリンピック・パラリンピックが1年遅れで開催されたものの、無観客での実施を余儀なくされるなど、社会全体が「新しい生活様式」への適応を強く求められた期間です。一方で、デジタル化が加速し、リモートワークやオンラインイベントが一般化したことで、人々のエンターテインメントへのアクセス方法も劇的に変化しました。 音楽シーンにおいては、CDセールスからストリーミング再生数へと評価軸が完全に移行した決定的な年となりました。特に、TikTokを筆頭とするショート動画プラットフォームが楽曲のバイラルヒットを生む主要な起点となり、アーティストのプロモーション戦略も大きく変化しました。顔出しを控えた「ネット発アーティスト」がチャートの上位を占拠する光景が当たり前となり、リスナーはジャンルにとらわれず、自身の感性に響く楽曲をプレイリスト単位で消費するようになっています。この年は、まさに日本のポップミュージックがデジタルネイティブな層を中心に、新たな黄金期を迎えた象徴的な12ヶ月でした。 1位: ドライフラワー / 優里 リリース年: 2020年 収録アルバム: 『壱』 優里の『ドライフラワー』は、まさに2021年を象徴する圧倒的なロングヒット曲です。前年にリリースされた楽曲ですが、切ないメロディと共感を呼ぶ歌詞が、サブスクリプションサービスを通じて爆発的な広がりを見せました。YouTubeの「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンスが大きな話題となり、歌声の持つ力強さと表現力が幅広い層に届いたことも勝因の一つです。SNSでのカバー動画や弾き語り投稿が絶え間なく行われたことで、楽曲自体が生命力を持ち続け、ランキングの頂点へと上り詰めました。失恋の痛みを繊細に描いた世界観は、多くのリスナーにとっての「自分たちの物語」となり、ストリーミング時代における新たなスタンダード・ナンバーとして確立されました。この楽曲の成功は、無名のシンガーソングライターがSNSを駆使することで、瞬く間に国民的ヒットを飛ばせるという、現代音楽シーンの構造的な転換を証明した事例と言えるでしょう。 Spotifyで再生 YouTubeで「優里 ドライフラワー」を視聴する
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2022年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2022年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2022年は、世界がパンデミックからの出口を模索しつつも、ロシアのウクライナ侵攻による国際情勢の悪化や、止まらない円安・物価高騰が国民生活に影を落とした一年でした。一方で、国内では行動制限の緩和が進み、少しずつ日常の風景が戻り始めました。安倍晋三元首相銃撃事件のような衝撃的なニュースが社会を震撼させる中、デジタル技術の進化は加速し、SNSでの「ショート動画」が流行の震源地として定着。人々の消費行動は、テレビ番組からスマートフォン上のコンテンツへと完全に移行し、リアルとデジタルがより濃密に混ざり合う時代へと突入しました。 音楽シーンにおいても、この「デジタルネイティブなヒット」が完全に定着した一年でした。TikTokやYouTubeで拡散された楽曲がそのままチャートを席巻し、特定のファン層だけでなく、幅広い世代がそのリズムを耳にするという現象が当たり前になりました。特にアニメーション作品との親和性は極めて高く、映像作品が持つストーリーと楽曲の疾走感が相乗効果を生むケースが目立ちました。Official髭男dismやKing Gnuといった実力派バンドが確固たる地位を築く一方で、AimerやTani Yuukiのように配信を通じて一気にブレイクするアーティストが現れ、チャートの顔ぶれはより多様で流動的なものとなりました。 1位: 残響散歌 / Aimer(エメ) リリース年: 2022年 収録アルバム: 『Open α Door』 テレビアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』のオープニングテーマとして起用され、リリース直後から圧倒的な勢いでチャートを駆け上がった楽曲です。Aimerの持つ、どこか憂いを帯びた独特のハスキーボイスが、遊郭というきらびやかな舞台設定と緊迫した戦闘シーンに見事に呼応し、視聴者の心を鷲掴みにしました。疾走感あふれるメロディラインと、華やかでありながらもどこか切なさを感じさせるアレンジが絶妙なバランスで共存しています。配信が開始されるやいなや、ストリーミングランキングで驚異的な数字を叩き出し、年間を通じて不動の強さを見せつけました。タイアップのパワーはもちろんのこと、楽曲自体の持つドラマチックな展開が、ファンだけでなく幅広い層のリスナーを惹きつけ、2022年を象徴する一曲として燦然と輝いています。 Spotifyで再生 YouTubeで「Aimer 残響散歌」を視聴する
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2023年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2023年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2023年は、新型コロナウイルス感染症による制限が完全に解除され、人々の生活が本格的に日常を取り戻した記念碑的な一年となりました。5月には感染症法上の位置付けが「5類」へ移行し、社会経済活動は再び活発化しました。また、ChatGPTをはじめとする生成AIの急速な普及が世界を驚かせ、デジタル技術がより身近な存在へと変化した時期でもあります。物価高の影響で生活防衛意識が高まる一方で、エンターテインメントへの消費意欲は依然として旺盛であり、イベントのリアル開催復活が市場を大きく押し上げました。 音楽シーンにおいては、ストリーミングサービスの普及が完全に定着し、楽曲がロングヒットしやすい土壌がさらに盤石なものとなりました。特にアニメや映画とのタイアップ曲がSNSを通じて爆発的に拡散され、チャートを支配する傾向がより強まったのが特徴です。また、TikTokを起点としたヒットや、YouTubeでのMV再生回数がチャートに直結する流れも加速しました。特定のジャンルに偏ることなく、多様な個性を持つアーティストたちがストリーミングというプラットフォームで直接リスナーと結びつき、国民的なヒットへと成長させるパワーダイナミクスが顕著に現れた一年でした。 1位: アイドル / YOASOBI リリース年: 2023年 収録アルバム: 『THE BOOK 3』 2023年の音楽シーンを象徴する一曲といえば、迷わずこの曲が挙げられるでしょう。アニメ『【推しの子】』のオープニングテーマとして書き下ろされた本作は、原作の世界観を徹底的に深掘りし、アイドルという存在の虚実皮膜を音楽的に昇華させた傑作です。疾走感あふれる楽曲構成の中で、ikuraの変幻自在なボーカルが「完璧で究極のアイドル」を体現。Ayaseによる巧みなサウンドメイキングは、J-POPの枠組みを超えてグローバルなリスナーをも魅了しました。リリース直後から国内チャートを独占し、ビルボード・グローバル・チャートでも上位に食い込むなど、社会現象とも呼べる圧倒的な数字を残しました。ストリーミング、ダウンロード、動画再生とあらゆる指標で首位を突き抜け、文字通り2023年の日本の音楽シーンの顔となった楽曲です。 Spotifyで再生 YouTubeで「YOASOBI アイドル」を視聴する
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2024年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2024年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2024年は、日本社会において大きな変化と再編の兆しが見られた一年でした。長年続いたマイナス金利政策が解除され、経済面では株価がバブル後最高値を更新するなど市場の動きが活発化した一方で、記録的な円安や物価高が家計に重くのしかかり、生活者の実感を伴う景気回復には課題が残りました。また、元日に発生した能登半島地震や、激動する国際情勢によるサプライチェーンへの影響など、先行きが不透明な不安も漂う中、人々はSNSを通じた「短尺動画」でのエンタメ消費を加速させました。街中ではインバウンド需要が完全に回復し、海外からの観光客で溢れかえるなど、日常の景色がコロナ以前を超えて変化していった一年と言えるでしょう。 音楽シーンにおいては、ショート動画プラットフォームでの拡散力が、チャートを支配する決定的な要因として定着した年となりました。特にTikTokやYouTube Shortsでバズを生み出し、そこからストリーミング再生数へと直結させるフローが定石化し、新人からベテランまでその戦略が浸透しました。ジャンル面では、ヒップホップの枠を超えてダンスミュージックへ接近した楽曲や、高い歌唱力を武器にしたボーカル重視の楽曲が支持を集めました。また、Mrs. GREEN APPLEに代表されるような、圧倒的なライブパフォーマンスとキャッチーなメロディラインを併せ持つバンドが複数の楽曲を同時にランクインさせるなど、アーティストのブランド力がチャート全体を牽引する現象も顕著でした。 1位: Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts リリース年: 2024年 収録アルバム: 『二度寝』 2024年の音楽シーンを象徴する現象と言えば、間違いなくこの楽曲です。アニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期のオープニングテーマとして起用されると、中毒性の高いサビと「BBBBダンス」と呼ばれる独自の振り付けがSNSで瞬く間に拡散されました。Creepy NutsのR-指定による、超絶技巧とも言えるラップスキルと、DJ松永が作り出すミニマルながらも体を揺らすトラックが見事に融合。日本国内のみならず、そのユニークなサウンドは海外のチャートにも波及し、グローバルなバイラルヒットを記録しました。ストリーミング再生数は記録的な数字を叩き出し、彼らが長年積み上げてきたHIPHOPへの真摯な姿勢が、大衆的なポップアイコンとして結実した記念碑的な一曲となりました。 Spotifyで再生 YouTubeで「Creepy Nuts Bling-Bang-Bang-Born」を視聴する
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2025年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2025年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2025年は、日本国内においてデジタル経済の定着と、それに伴う消費行動の二極化が顕著になった1年でした。AI技術の社会実装が本格化し、生成AIを用いたクリエイティブが身近になる一方で、人々の関心は「リアルな体験」へと先祖返りするような動きも見られました。政治経済面では、物価高騰が続く中で個人の可処分所得への意識が高まり、エンターテインメントにおいても「コストパフォーマンス」ならぬ「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する傾向が加速。SNSでのバイラルヒットがその日のうちにニュースになるなど、情報の伝播速度はかつてないほど高速化し、人々の注目を一瞬でさらう「瞬発力のあるコンテンツ」が市場を支配しました。 音楽シーンにおいては、ストリーミング再生数がチャートの絶対的な指標となる中で、ファンベースの熱量がチャートアクションを左右する「コミュニティ主導型」のヒットが定着しました。特に、短尺動画プラットフォームでの楽曲使用が前提となった楽曲構成は、サビのキャッチーさや、動画のBGMとして機能する中毒性がこれまで以上に求められるようになりました。Mrs.GREEN APPLEのように、複数の楽曲を同時にチャートインさせる「アルバム単位での現象化」が成功モデルとして確立され、トップアーティストにとっては「シングルヒット」から「アーティストブランド全体の浸透」への転換点が訪れた1年といえます。また、K-POP勢と日本のアーティストが垣根なくコラボレーションし、グローバル基準のポップスが日本国内のチャートで当たり前のように上位を占めるようになったことも、2025年の大きな音楽的特徴でした。 1位: ライラック / Mrs.GREEN APPLE リリース年: 2024年 収録アルバム: 『ANTENNA』 2024年にリリースされた本作は、2025年もその勢いを全く落とすことなく、年間を通して圧倒的なストリーミング再生数を記録しました。アニメのオープニングテーマとして起用されたことで広く認知を獲得した後、TikTokをはじめとするSNSでのバイラルヒットが爆発。疾走感溢れるメロディラインと、等身大の葛藤を描いたリリックが、幅広い世代の共感を呼びました。前年に引き続きランクインを果たしたこの楽曲は、単なるアニメソングの枠を超え、Mrs.GREEN APPLEの代名詞的な楽曲として定着しました。彼らの音楽が持つ、聴き手の感情を瞬時に高揚させる力は、ストリーミング再生という形で可視化され、チャートを席巻し続けたのです。この圧倒的なロングヒットは、一度のヒットで消費されることなく、彼らの音楽性が日常のあらゆる瞬間にフィットする「スタンダード」として受け入れられた結果に他なりません。 Spotifyで再生 YouTubeで「Mrs.GREEN APPLE ライラック」を視聴する
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2014年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2014年 ビルボードJAPAN TOP10 邦楽ヒット曲を振り返る

2014年は、世界が大きく揺れ動いた年でした。ウクライナではマイダン革命で政権が転覆し、ロシアによるクリミア併合と東部の紛争が勃発。中東ではISIL(イスラム国)が台頭し、アメリカが空爆に踏み切る事態にまで発展しました。西アフリカではエボラ出血熱が猛威を振るい、WHOが緊急事態を宣言。マレーシア航空MH370便の失踪や韓国セウォル号の沈没など、痛ましい事故も世界を震撼させました。一方で、ソチ冬季オリンピックでは羽生結弦が金メダルを獲得し、全米オープンテニスでは錦織圭が日本人初の決勝進出を果たすなど、スポーツでは明るい話題も。国内では消費税が5%から8%に引き上げられ、STAP細胞問題が科学界を揺るがし、『笑っていいとも!』が32年の歴史に幕を下ろし、ディズニー映画『アナと雪の女王』が社会現象となった年でもありました。 そんな激動の一年において、音楽シーンは「アイドルの圧倒的なセールス力とコンテンツ発ヒットの共存」が際立ちました。CDセールスでは嵐やAKB48がチャート上位を独占する一方、映画『アナと雪の女王』から生まれた「レット・イット・ゴー」が配信を中心に記録的なヒットを叩き出し、ファレル・ウィリアムスの「ハッピー」は世界同時多発的にダンス動画を生み出す社会現象に。YouTubeやSNSでの拡散がヒットの起爆剤となり、音楽の届き方そのものが変わりつつあることを強く実感させる一年となりました。 1位: GUTS! / 嵐 リリース年: 2014年 収録アルバム: 『THE DIGITALIAN』 二宮和也が主演を務めたドラマ『弱くても勝てます 〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜』の主題歌として書き下ろされた本作。嵐らしいポジティブなメッセージと、思わず体が動き出してしまうような軽快なブラスサウンドが融合した一曲です。メンバーたちの突き抜けるようなボーカルと、野球の応援歌を彷彿とさせるキャッチーなメロディラインは、当時の日本中を元気づける応援ソングとして圧倒的な支持を獲得しました。ミュージックビデオで見せた彼ららしい親しみやすいダンスパフォーマンスも話題となり、老若男女から愛される国民的アイドルとしての地位を改めて証明する結果となりました。多くのファンにとって、この曲は2014年という輝かしい時代の象徴として記憶に刻まれています。 Spotifyで再生 YouTubeで「嵐 GUTS!」を視聴する